02 妖精の住む庭

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 キッチンから繋がる扉から外へ出ると、灌木が裏庭に向けて伸びている。メルヴィの腰ほどの高さだが、子どもにとっては背丈にも相当する。こういった茂みには、なにか(・・・)が潜んでいることも少なくない。  様子を見ながら歩いてると、小さな声が聞こえてきた。声の主はひとりしかいないだろう。 「ケイシー、どうかしたの?」 「なんでもないわ、向こうへ行って」  いつから外にいたのか。寒さに頬を赤く染めたケイトリンは、まるで背中に何かを隠すような素振りで、こちらを睨んでいる。  悪い気配はしない。むしろ場の空気は安定している。  近づくメルヴィに対し、後ずさるケイトリン。  少女の背中から覗いた緑色は灌木の葉ではなく、動物の毛並みのように見えた。 「ケイシー、それは」 「ダメ! 化け物なんかじゃないの。ごめんなさいごめんなさい、おねがい殺さないで」  立ち上がると、灌木と同じぐらいの背か。小柄なケイトリンより高いのではないかというそれは、深い緑色をした長い体毛に覆われており、ぐるりと巻かれた縄のようなしっぽを揺らして佇んでいる。  メルヴィから逃がそうとしているのか、動物の身体を押しているケイトリンに声をかけた。 「私にも紹介してくれないかしら。あなたのお友達」 「石を投げない?」 「そんなひどいことしないわ」 「棒で叩いたり、水をかけたり、大きな声で追い払おうとしたり――」 「しないわ。大丈夫」  言いながら近づいて、ケイトリンの前に膝をつく。怯えた顔の少女を安心させるように微笑んで、次に緑色の動物に視線を移した。
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