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「ほぼほぼ、おれのためでもあったけど」
と、なんのことか戒斗はそう云って、握手したいところだけど、と続けながらちらっと航に目をやって――
「航から殴られそうだからやめておこうか」
と、実那都に目を戻すとおどけて肩をすくめた。
思わず隣を振り仰ぐと、航はからかわれたにもかかわらず、逆に思う壺だといった様子でにやりとしている。
「さすがかどうかはわかんねぇけど、賢明だな」
「どういう人間か、見る目はあるつもりだ」
戒斗は、航に負けていない自信満々ぶりだ。
「光栄に思えって?」
「そう云うほど、おれは何者でもない」
戒斗は軽く一蹴すると、
あいつらが待ってる、
と云って後部座席のスライドドアを開いて乗るように促した。
「おう」
「荷物はこちらへ」
航の返事に被せるように、また別の男性の声がした。
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