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第1旅客ターミナルの外に出ると車がずらりと並んでいる。
航はまっすぐ車の列に向かう。
すると、正面に止まっているロイヤルブルーのミニバンの助手席のドアが開いた。
降り立ったのはラフな恰好をした男性だ。
背が高く、やたらと目立つ――簡単に云えば眉目秀麗な出で立ちは見間違えようもなく、以前、航から見せられた写真の男性――有吏戒斗だと確信した。
航と実那都が目の前に立ち止まるまで、戒斗は興じた面持ちでふたりをかわるがわる見やった。
航は実那都を見下ろすと、キャリーケースから手を放して、グーサインをしたその手をひねり、立てた親指を戒斗のほうへ向けた。
「こいつが有吏戒斗だ」
二つ年上の戒斗を『こいつ』呼ばわりするのは航らしいのかもしれないけれど、それよりはきっと、よほど馬が合うのだ。
「だと思った」
実際に戒斗は怒った様子もなく、そう云った実那都の返事をおもしろがっている。
「紹介のとおり、有吏戒斗だ」
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