7.不束者vs不届者

3/55
前へ
/188ページ
次へ
 その間、実那都は航を援護することもできなくて、否定の言葉を待っていた。 一度めにはね除けられたら二度めはない。 立ち向かうことをしない。 それはいつの間にか身についた、実那都の癖だった。  認められるわけないでしょ、と、母の第一声はどの部分についてだったのか。  二度め、よろしくお願いします、と航は反論もせず引きさがる言葉もなく、ただ頭を下げた。  実那都ならきっとあきらめていたのに、航はそうすることなく、いや、それ以上に――     *  気まずいような空気を航はものともせず、お邪魔しました、とリビングのソファから立ちあがり、実那都は逃亡するような気分で航のあとを追った。 「航……」  なんと声をかけたらいいか、そんな戸惑いからではなく、それならなんだろう、外に出るなり実那都は呼びかけた。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加