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その間、実那都は航を援護することもできなくて、否定の言葉を待っていた。
一度めにはね除けられたら二度めはない。
立ち向かうことをしない。
それはいつの間にか身についた、実那都の癖だった。
認められるわけないでしょ、と、母の第一声はどの部分についてだったのか。
二度め、よろしくお願いします、と航は反論もせず引きさがる言葉もなく、ただ頭を下げた。
実那都ならきっとあきらめていたのに、航はそうすることなく、いや、それ以上に――
*
気まずいような空気を航はものともせず、お邪魔しました、とリビングのソファから立ちあがり、実那都は逃亡するような気分で航のあとを追った。
「航……」
なんと声をかけたらいいか、そんな戸惑いからではなく、それならなんだろう、外に出るなり実那都は呼びかけた。
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