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「ああ。これでクリアだ。あとは――おまえがやることは勉強のみだ」
航はにやりとして云いきった。
外灯のもと、それは闇の使者が罠に嵌まった者を愚弄した嗤笑にも見えた。
「クリア、って?」
実那都の両親はひとつも納得していなかった。
前途多難、そんな言葉がぴたりと当てはまって、実那都からするととてもクリアしたとは思えない。
「おまえの親には悪ぃけど、認めてもらうかもらわないかは関係ねぇ。おれんちの親、『きちんと伝えなさい』とは云ったけど、認めてもらえとは云ってねぇし」
どうだ? と訊ねるかわりに航は不遜に首をかしげた。
果たして、航の両親が言葉に込めた真意がどうだったのか、航は都合のいいように受けとっていた。
実那都はびっくり眼になって、笑うのを通り越して気が抜けた。
うなずいた弾みに目から雫が落ちた。
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