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「持ってろ」
そう云って航は実那都から離れ、万歳した。
すぐに実行してみせるつもりだと察し、実那都が危険だと止める間もなく、航はひょいと飛びあがってあっさりとバク転を成功させた。
「航……すごい!」
「ったりめぇだ。これくらい序の口だって。おれはできねぇことは云わねぇ。わかったか?」
「背中からぶつかった壁も吹き飛ばせるの?」
航は実那都の傍に戻ってきてスマホを受けとりながら、宙に目をさまよわせたあと。
「それはできねぇかもしんねぇ」
と、あっさりと前言撤回になるようなことを云う。
プッと実那都は吹きだす。
それで終わる航でもない。
「けど、別の……遠回りでも、ずっとさきでも、もっといい景色の見える道を進む」
航は実那都にとって希望そのものだ。
期待すること以上の力強さを見せてくれる。
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