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「うん。わたしもがんばって追いかける」
「追いかけるんじゃねぇ、並んでくに決まってんだろ。実那都、前向くのはずっとさきの時間じゃなくていい。まずは一年後を向け」
「そうする」
云いながらこっくりとうなずいた刹那、航の両手が実那都の頭をホールドした。
航の顔が急速にズームアップして傾く。
実那都は顔を仰向けられたとたん、瞬間的に目を閉じた。
“挨拶がわり”のキスではなく、くちびるが押しつけられる。
乱暴にも見えるしぐさだけれど、それよりも熱に浮かされたようながむしゃらさを感じた。
いつもよりずっと長いキスは息の仕方がわからない。
小さく呻いて、酸素不足を補うべく実那都の口がわずかに開く。
すると、航はくちびるに吸着しながら逆に離れていった。
「あぶねぇ」
航がつぶやき、実那都は目を開けた。
視界がはっきりしないのは航の熱が伝染したせいか、実那都は瞬きをした。
「……何?」
「多感な少年には刺激ありすぎだ」
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