7.不束者vs不届者

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 多感な少年とは自分のことを云っているに違いなく、航は少年ではあるけれど、自分で自分を多感だなんて普通は云わない。 実那都が笑ったのを見て、航は警告するように目を細めた。 「まずは一年後だな。おれも前を向く最大の理由ができた」 「なんのこと?」 「一年後、いま笑ったことを実那都に後悔させてやる」     *  その一年後、ふたりとも無事に青南(せいなん)大学に合格して、三月の末、実那都は独り飛行機に乗り、ちょっとぽかぽかして見える午後、東京にまさに降り立った。  東京に来たのは受験のときに一度、航とその親友、日高良哉(ひだかりょうや)と一緒に来たときだけだ。 独りでは今日がはじめてで、勝手がうろ覚えのまま、手荷物受取の場所で自分のキャリーケースを見つけてほっとしつつ、外に出たとたん、そのキャリーケースが斜め後ろから奪われた。  ハッと焦って振り向いた刹那、実那都の顔が驚きに満ちたのはつかの間、笑顔に変わった。
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