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「あんた、マジでへったくそすぎんだろ」
やがて青瀬君が痺れを切らしたように吐き捨てた。
だから言ったのに! 分かり切ってる事なんだから文句を言わないでほしい!
「し、仕方ないじゃん! どう触ったら正解かなんて分かんないよ!」
「ああ、はいはい。そうですね。あんたの場合、1から10まで説明しないと駄目ですもんね」
うざったそうに言った青瀬君は私の右手首を掴むと、今まで触れてこなかった上部へと滑らせた。
「もっと上の方も触って。ここらへん」
「う……は、はい……」
今まで掌に感じていたものとは一気に感触が変わって、怖気づいてしまう。私は一体、どれのなにを触っているんだろう?
「馬鹿の一つ覚えみたいに動すんじゃなくて、色々と動かして刺激変えてみて下さい」
導かれるまま、ぐにぐにの先端部分を親指でなぞってみる。すると、ぬるりと冷たいものが指に触れて、びくっとしてしまった。
見えないから分からないけれど、なんだか粘度が高くて蜂蜜のような感触だ。
「そこ、もっと触って。左はそのまま、もうちょいスピード上げて」
命令されるままに一生懸命手を動かす。段々と蜂蜜のようなものが量を増していって、私の右手だけじゃなくて左手にまで纏わりついていった。
やがて微かな水音に混じって、少し乱れた青瀬君の呼吸が私の鼓膜に届き始めた。
「……あー、やっば。ちょっと胸貸して下さい」
「へ……ふぎゃっ」
なんの前触れもなく、バスローブの隙間から指が忍び込んできた。驚いた私は頑なに閉じていたはずの瞼を思わず押し上げてしまった。
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