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「あ……あの、すみません……い、生きていらっしゃいますか……?」
ぴくりともしないその人に恐る恐る呼びかけると「んー……」という眠たげな声と共に、シーツの山がもぞもぞと動いた。
「ねっむ……」
欠伸をしながら頭をもたげたその人の顔を見た瞬間、凍り付いた。
神様がプレゼントしてくれただなんて、とんでもない。なぜならその人は、私が良く知っている人物だったからだ。
「あ……青瀬君……?」
私の震えた声に、青瀬君がこちらに眼を向ける。お化粧映えしそうなほど綺麗な二重の目と視線が交わって、私たちの間に流れていた時間が完全に動きを止めた。
目の前の人物が青瀬君に似ている誰かだと思いたかった。けれど、見れば見るほどその人は、私の会社の後輩である青瀬 瑞樹君、本人だった。
あまりのことに瞬きすら忘れていると、不意に青瀬君が身体を起こした。ずり落ちたシーツの先からつるりとした白い肌が現れて、ぎょっとしてしまった。どうやら青瀬君も私と同じように裸らしい。
青瀬君は上半身だけを起こした状態で、何やらベッドの下あたりを無言で探っている。ガサガサという音が聞こえるので、ゴミ箱を漁っているのだろうか。
訳も分からずその行動を見守ることしか出来ないでいると、やがて青瀬君が言葉を発した。
「あ、良かったですね」
「へ……?」
「ちゃんとこれ使ってたみたいですよ」
〝これ〟と言われながら、目の前に突き出された物体Xの正体がなんなのか、理解するまでにとっても時間がかかった。
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