656人が本棚に入れています
本棚に追加
膨らませる前の風船のような見目のそれは、真ん中辺りでぎゅっと丸結びにされていて、白色に近い何かの液体が先端部分に溜まっているのが、半透明の素材から透けて見えた。
「……卵白? か、薄まった練乳……?」
「んなわけないでしょうが。精子だよ」
「せっ、い……!? きゃあ!」
物体Xから逃れるようにして大きく仰け反った私は、そのままベッドから転がり落ちてしまった。
打ち付けたお尻の痛さを気にする余裕もなく、必死にシーツを身体に巻き付ける。私はパニック状態のまま、上から悠々とこちらを見下ろしている青瀬君を見上げた。
「な……なに……なんで? え? え? どういうこと……?」
「は? まさかとは思いますけど、昨日のこと覚えてないんですか?」
「昨日のこと……?」
必死に最後の記憶を辿る。昨日は確か会社の飲み会だった。普段はあんまりお酒を飲まないけれど、部長がお酌してくれた日本酒が思ったよりも飲みやすくて、だから3杯くらい飲んじゃって、それから、それから。
「…………」
ほんの断片的にだけど、記憶が蘇ってきた。途中で眠たくなっちゃって、机に突っ伏して眠っていたら部長に起こされて、もう飲み会終わったよって言われたのに立ち上がれなくて、そうしたら誰かが言ってくれたんだ。僕が白花さんのこと送っていきますよ、って。
そのまま青瀬君に支えられながらお店を出て、ちょっと〝休憩〟しませんか?って言われて、それで、それで、私……しようしよう、って言った気がする。
最初のコメントを投稿しよう!