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「へ?」
「何してくれるんです?」
「……と言いますと?」
「大事な後輩をホテルに連れ込んだお詫びに何してくれんの? って訊いてるんです」
「お、お金……ちょっとなら出せます。本当にちょっとで良ければだけど……」
「だから要らないって言ってんでしょ」
「え! じゃ、じゃあ肩もみとか……?」
「もっと要らねーよ」
「えええ? んじゃ、えっと、えっと……あ、分かった! 私が青瀬君のお仕事手伝うとか……!」
「今以上に仕事抱え込んで、あんたの能力で納期までにさばけるのかよ」
うぅ。なんだか青瀬君がありえないくらい冷たい。いつもはこんなんじゃないのに。
「……そういえば俺、今彼女居なくて結構溜まってるんですよね」
困り果てていると、青瀬君がふとしたように呟いた。青瀬君の口から〝溜まってる〟なんて破廉恥な言葉が飛び出てくるなんて、なんだか信じられない。
どぎまぎしながら「それは大変だね」と相槌を打ったら、なぜだか冷たい視線を浴びせられた。なんでだよぅ。
「まあ風俗なら手っ取り早いんですけど、かと言って見ず知らずの女とヤるのも嫌なんですよね」
「そっかそっか、お金いっぱいかかるもんね……うちの会社、お給料安いもんね……」
「だから金の話から離れろよ」
ぴしゃりと怒られてしまい、しゅんとしながら口を噤む。怒っていらっしゃるお客様には、とにかく余計な事は言わずにひたすら同調しろって部長に教えてもらったのに。青瀬君にはなんだか逆効果みたいだ。
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