656人が本棚に入れています
本棚に追加
「直接触って下さい」
「ど……どうしても……?」
「いつかは触んなきゃいけないんですから、さっさとしろよ」
青瀬君が何をしたのか分からないけれど、衣擦れの音がしたかと思えば、突然指先に何かがべしっと当たって、思わず「ひっ」と悲鳴を上げてしまった。
それはずしりとした質量を持っていて、目を瞑っていてもはっきり分かるくらいに存在を主張していた。
全身で震えながら、とりあえずそっと指先で触れてみる。
おっかなびっくり形を確かめているうち、なんだか握りやすい形状をしている事に気が付いたので、とりあえず右手でそーっとそーっと握ってみた。
固いのか柔らかいのか、なんとも言えない奇妙な感触だった。ごつごつしてるのかな? と勝手に思っていたけれど、想像よりもずっとすべすべしている。
「白花さん。動かして」
「は、はい……」
合っているのか分からないけれど、これまたそーっとそーっと手を上下に動かしてみた。うぅ、なんかぐにぐにしてるし、生き物みたいで怖いよぅ。
「い……痛く、ない?」
逃げ腰になりながら尋ねると「むしろ弱えよ」と、冷たい言葉が返ってくる。
「もう少し力入れて。てか、両手でして下さい。まだるっこしい」
「う、ひゃ、」
難を逃れていた左手までをも攫われて、右手と一緒にぐにぐにを掴む派目になってしまった。
必死に両手で包み込んで動かしてみるけれど、どれくらい力を入れて良いのか分からないし、あんまり強く握ったらぽっきり折れちゃったりするんじゃないかなと思ったら怖くて、どうしてもぎこちなくなってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!