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魔王の玉座が鎮座する広間は奇妙な静寂に包まれていた。
時折、どこからか忍び込んだ風が魔物の嘲笑う声に聞こえる。
松明の火がゆらゆらと揺蕩うたびに、魔王と幹部の顔を怪しく何度も灯した。
「魔王様! いよいよですね!」
魔王幹部の一人がそう言うと、
「ああ…長かった。この時をどれだけ待ちわびたことか」と魔王は不気味に微笑んだ。
魔王は自分の体に視線を向けた。
手のひらを何度も動かし、体の感触を確かめる。
「勇者によって傷ついた体はすでに癒えた。余の世界征服はまだ始まったばかりじゃ」
幹部は神妙に頷いた。
「忌々しい勇者共め…。奴らが存在する限り我が覇業は成就せぬ。今度こそ…すべての人間を余に服従させねば、余の怒りはおさまらん」
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