1.池光

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 翌朝、出社して席に着き、向かいの席の二葉さんを見ていると、 「おはようございます。」 と笑顔で挨拶をされる。 「おはようございます。」  俺の返事に笑顔で頷き、キーボードを叩き始める姿をそのまま眺める。俺の視線に気が付いて、二葉さんがこちらを見る。 「どうかしました?」 「髪切ったんですね。」 「ん?ああ。よく気が付きましたね。」  自分の髪を触りながら、二葉さんが笑う。 「なぜ、気が付かれないと思えるんですか?」 思わず聞くと、二葉さんが 「変な質問ですね。」 と笑う。  そうだろうか。気が付かれないと思う方が変だと思うのだが。二葉さんは昨日まで、肩より少し上くらいの長さのボブカットだった。それが今は、耳がギリギリ隠れる程度のショートカットになっている。 「誰もが気付くと思いますが?」 「そうですか?」 「かなりの変化です。」 「そうですか。」  二葉さんが微笑んで、またキーボードを叩き始める。
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