1.池光

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「ところで二葉さん。」 「はい?」 「どなたか分からない方がいまして。」 「またですか。」  可笑しそうに笑われて、俺は少しホッとする。 「モテる男は大変ですね。」 「そういうわけでは。」 「度を越してモテる人は、謙遜せずに認めちゃったほうがいいですよ。」 「そうですか?」 「はい。その方が周りも楽です。」  俺は少し考えた後 「度を越してモテるもので、また知らないうちに職場の女性、しかも先輩に目をつけられたようなのですが、相手が誰なのか分からず困っています。お力添えを。」 と言って頭を下げる。二葉さんが、あはは、と笑ったあと 「特徴は?」 と聞いてくる。 「俺が書類を持っていく部署に所属していて、髪が長くて、顔立ちも、服装も、化粧も、香りも、主張が強めの人です。」 「うーーーん・・・・。」 「俺が紅茶好きと誤解してました。」 「うーーーん・・・・。」 「オータムなんとか、というダージリンを持っていました。」 「ん?ダージリンのオータムナル?」 「あ、それ。」  頷くと、二葉さんが苦笑する。
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