1 起動

1/3
前へ
/200ページ
次へ

1 起動

──システム、異常なし。バッテリー状態、良好。 「EDEN Defense System。スタートアップ」  ボクが起動すると、そこは黒い壁に囲まれた暗い部屋だった。大きなモニターの光がなければ、部屋の中は真っ暗だ。 「やぁ、お目覚めだな」  声のする方を見ると、そこに居たのは白いスーツを着た男の人。  整えられた黒髪と、清潔感のある装い。優しく微笑んでいるが、眼差しは氷のように冷たい。 「9号機。気分はどうだ?」 「ボクに気分という概念はありません」 「ああ……そうだな。お前はアンドロイド。心などないか」  男の人はそう言って嗤った。 「所で、貴方は誰ですか?」 「私は天海修吾(あまみしゅうご)。エデンカンパニーの社長であり……お前の開発者だ」 「ボクの……開発者」 「そう。私はお前のマスターだ。お前は私の命令に従っていればいい。それがお前の存在意義だ」 「マスター……存在意義……」  ボクがこの世界に存在しているのは、マスターのお陰。マスターのために働くことが、ボクの生まれた理由なんだ。   「分かりました。命令を下さい」 「よろしい。少し待っていなさい」  マスターはそう言うと、部屋から出て行った。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加