7人が本棚に入れています
本棚に追加
2 帰宅
聖夜さんに連れて来られたのは、エデンカンパニーのすぐ近くにある綺麗なアパートだった。玄関先の看板に、エデンカンパニーと同じマークが付いていたのを考えると、このアパートはエデンカンパニーが運営しているのだろう。
「ただいま~!」
聖夜さんは誰も居ない部屋に向かって声を掛ける。返事が返ってくるはずないのに、何故そんなことをするのだろう?
そんなことを考えながら、ボクが黙って部屋に入ろうとすると、聖夜さんが立ちはだかって僕を遮った。
「家に帰ってきたら、ただいまって挨拶しなきゃいけないんだぞ?」
「ここはボクの家じゃありません」
「まあまあ、そんなこと言わずにさ!折角同じ家に帰ってくるんだから、挨拶ぐらいしてくれよ!」
……必要性が分からない。この人はボクと家族にでもなりたいんだろうか。マスターはこの人のことを英雄だと言っていたけれど、とてもそうは見えない。ボクは家族ごっこをするためにこの人といる訳ではないのに……
とはいえ、家に上がれないのは困る。ここは取り敢えず聖夜さんに合わせておこう。
「ただいま……」
「はい、よくできました!」
聖夜さんはニカッと笑って、僕の頭をわしゃわしゃと撫でた。
最初のコメントを投稿しよう!