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「話的には魔王と両想いになったところで終わってるんだから、後のことは書きたかったから後日談にすればいいんじゃない?」
今まで書いたものを削るという発想はなかったから目から鱗が落ちた。いらない部分を削ることは話を書くうえでも重要なことよ、と言いながら小柳先輩は鞄からノートパソコンを取り出して、机の上で広げる。
「え、先輩どうしたんですか」
「いや、ふたりが自分の作品に向き合ってるの見たら私も何か書きたくなっちゃった」
「えぇ受験はいいんですか?」
「最近ずっと数学ばっかりやってたから息抜きに日本語読んで書かなきゃ」
ニコニコしながらパソコンを操作して、ブラウザから開いたのはいつも投稿している小説投稿サイト。コンテスト一覧のお題を見た小柳先輩は「おっ」と声をあげた。
「いいのあるじゃん。走り出す、だってタイムリーね。私、これで書くわ」
「え」
「オチがどうしても走り出す、で終わってしまう文芸部員の話。そうだなあ、タイトルは」
『走り出す呪いを解き放て』でいきましょう。と、キーボードを叩き始めた小柳先輩は嬉しそうだ。予想外にネタを提供してしまった私たちは、思わず顔を見合わせて小さくため息をついた。
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