走り出す呪いを解き放て

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 私はファンタジーBLの続きを、瑠美は先ほどの新作に向き合う。部室にキーボードを叩く音だけが鳴り続けた。30分程たって最初に声を上げたのは瑠美だった。 「ダメだ、規定の文字数を超えちゃう」 「……だよね」 「ここから先をあと1500文字で……無理だ」 「私なんて500字だよ」 「あぁ!」  規定文字数の1万字で終わらせた話の続きを書けば、そりゃあオーバーするわけで。結局、新たなオチにたどり着く前に規定文字数という厚い壁が立ちはだかった。  ほぼ同時に机へ倒れこんだその時、コンコンと部室のドアがノックされ、開いた。中から返事がないのに入ってくるのは部の関係者だけだ。 「お疲れ、あれ、今日は瑠美と沙織だけ?」 「小柳先輩」  入って来たのは今年の夏に引退した小柳先輩だった。小学生のころから小説を書いている先輩は、たまにコンテストで受賞もしている。大学受験を控えているからしばらく新しい小説は書かないと言っていたけど部室に何の用だろう。 「何か用ですか?」 「私物を取りに来たんだけど……今何のお題書いてるの?」 「私は炎で」 「あ、私は過去作の直しを」 「ふーん。ちなみに締め切りは」
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