3 告白

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「宇佐美くん」  黒絹の髪に手を伸ばす。 「宇佐美くん、聞いて?」  ざっと音を立てた強風の名残をそっと直しつつ、声をかける。 「嘘じゃない。歌鈴に紹介した後に話したこと、忘れてないし、バレンタインに言ったことも嘘じゃない」  私より身長が高いのに私より頭部が小さいなんて不公平だ、なんて、この場では憚られる不満を内心で漏らしながら、もつれた髪を整えてあげる。  さっき、力任せに掻き乱してたから、手櫛では限界があるんだけど。  宇佐美くんは何も言わない。ぺたんっと切り株に腰かけ、じっと(こうべ)を垂れて、私にされるがままだ。 「あなたに言われたことに『ありがとう』って御礼を言ったのも、ちゃんと覚えてる。でも……でもね? お正月のあれって……告白、だったの?」 「え……」  これ、言いにくい。聞きにくい。 「私、『好き』って言われてない。言われたのは、『あんたのことは、わりと気に入ってる』って言葉だった」  記憶に間違いはないから、言いにくい。 「だから、気軽に御礼を言った。それで交際してることになってるとは、思いも寄らなくて」 「いや、ちょっと待っ……」 「でも、ちゃんと確認してたら良かったのよね。気に入ってくれてる度合いについて」 「や、だから待っ……」 「あの時の宇佐美くん、様子が変だとは感じてたのに。そうしたら……」 「ストップ! ちょい黙れ! 話が噛み合ってない!」 「え?」  右手が掴まれた。同時に話もさえぎられる。そういえば、無意識のうちに後輩の髪をずっと撫でていたんだと、それも同時に気づいた。  そして、何が噛み合ってないんだろう。
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