4 花待つ、春のうた

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 声が届かなかったのかと心配して見上げると、初めて見る真っ赤な顔の後輩がそこにいた。  手の甲を口元に当てたその子は私を見ずに横を向いてたけど、むしろ目線が合わなくて良かった。赤面が移りそう。いや、私の顔も相当熱いけれども。 「やべ、照れる。つーかさ、あんたのさっきのあれ、何? ブーケに顔埋めての、あれ。あんなの反則だろ。堅物女のくせにっ」 「何のこと? 私は……」  ——ブー、ブブッ、ブブッ 「あ、ひかるからメッセージきた」  大事な会話途中だとわかってるけど、スマホが鳴ったからそっちを優先する。私はやっぱり堅物女だ。 「『皆で写真撮影するから早く戻っといで』ですって」 「あんのデカ女。いっちばん良いとこで邪魔しくさって!」 「ふふっ。でも、一番大事なことはお互いに言えたわ。宇佐美くんも一緒に行きましょ。写真、撮りたい」  拳を振り上げて怒る姿が可愛く思えたからか、一緒に写真を撮りたいと素直に言えた。 「チッ。まだ話はあるのに。これからのこととか、いろいろあるのに。あー、くそっ。ほら、行くぞ。鮎佳っ」 「あっ、ちょっと待って?」 「あ? 時間切れなんだろ?」 「そうなんだけど、少しだけ……あ、見つけた。白いスイートピーの花言葉は——」 「あっ、何、調べてんだよ!」  ひかるに返信をし、ポケットにスマホを戻しかけたところで、ふと気づいた。花言葉は、花弁の色ごとで違うことに。  スイートピーの花言葉は『旅立ち』だけど、白いスイートピーもそうだったかなと思ってしまったから、もう調べるしかない。
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