お酒の力を借りて…

2/4
前へ
/7ページ
次へ
『帰れなさそう。ホントにごめん。』 鳴ったケータイを開いてみれば、無機質な文字が踊っていた。 帰宅の知らせだと思って飛びついた私にとって、それは意図せず大打撃だ。 「そっかぁ…。」 『りょうかいです。気にしないで。』 ため息と共に出た言葉は自分に言い聞かせるため。 できる限り簡潔に返信を打って、そのままソファーへと画面を放り投げた。 仕方のない事だ。 社会人の生活リズムは仕事を中心に成り立っていて、トラブルやクレームがプライベートの都合など考慮してくれるはずもない。 しかしながら、だからといって寂しさが消えるわけではなかった。 二度あることは三度ある、なんて言うけれど、もうひと月、顔どころか声すら聞いていない。 思わずテーブルの上に並ぶ料理を見て、ため息をひとつ。 誕生日だからと張り切って作った料理が余計に虚しかった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加