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『帰れなさそう。ホントにごめん。』
鳴ったケータイを開いてみれば、無機質な文字が踊っていた。
帰宅の知らせだと思って飛びついた私にとって、それは意図せず大打撃だ。
「そっかぁ…。」
『りょうかいです。気にしないで。』
ため息と共に出た言葉は自分に言い聞かせるため。
できる限り簡潔に返信を打って、そのままソファーへと画面を放り投げた。
仕方のない事だ。
社会人の生活リズムは仕事を中心に成り立っていて、トラブルやクレームがプライベートの都合など考慮してくれるはずもない。
しかしながら、だからといって寂しさが消えるわけではなかった。
二度あることは三度ある、なんて言うけれど、もうひと月、顔どころか声すら聞いていない。
思わずテーブルの上に並ぶ料理を見て、ため息をひとつ。
誕生日だからと張り切って作った料理が余計に虚しかった。
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