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それほど長くのない廊下を進めばすぐに寝室に行き着いて、そのままベッドへと降ろされる。
「俺も、会いたかったよ。」
丁寧に布団をかけた彼はそう言うと、押さえ込むようにして手を繋いで、そのまま顔を近づけた。
文字通り鼻先が触れ合うほどの距離に、自然と心臓が跳ねる。
「…ちゅー、していい?」
「え、っ…。」
いいともダメとも言う前に重なった唇は、少し乾燥していた。
何度か角度を変えて触れ合って、その度に音を立てて離れていくものだからじわじわと羞恥心が募っていく。
「…していいなんて言ってない。」
「ダメだったの?」
暫くして開放されたあと、溢れた憎まれ口に彼は喉の奥で笑ってみせた。
ずるい。
ダメだなんて言う筈がないのに。
少し意地悪なその顔に弱い事を知っている癖に。
そうやっていつも、私のことをドキドキさせるのだ。
「ダメ、じゃ…ないけど…。」
悔しさを滲ませて絞り出したその言葉に、ほらねと彼は笑ってみせた。
「誕生日おめでとう。」
そして最後にもう一度キスをした。
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