✞episode1✞

9/16
前へ
/18ページ
次へ
「そうか、シド。まだ病み上がりだから食事をした方がいい。腹は空いてるか?」 「食事は嫌いだ。」 そういってシドは顔を背ける。 嫌な予感はしていたんだ。 今日はとても。 真っ白な肌、貧血気味の顔。 シドの顔を見て少しづつ確信へと変わる。 知っていた。見たことがあった。 腹を空かせた奴らの顔を。 ルイは急に立ち上がり近くのナイフで指を刺す。血が出てきた瞬間シドの前へと差し出した。 「シド。お前。……ヴァンパイアだろ。」 「……っ…………。」 賭けだった。殺される覚悟でシドに詰め寄る。あの結界を破ったのだ。今更戦ってもルイに勝ち目は無い。 「………。……っ………やめろ……」 血を目の前に苦しむシドをみて、さらなる疑問が生まれる。 通常上位ヴァンパイアでも血を流すと魔力枯渇と貧血を起こし、血を大量摂取する。理性が効かなくなる時もあると研究論文で読んだことがある。 なのにこいつは血を嫌がっている。 ほんとうにヴァンパイアじゃないのか。 自分でもびっくりするくらい冷静だった。 「シド、こっち向いて」 「…………くるな、襲うぞ。」 そのワードに少し怖気づいたが無視して、シドの口に無理やりナイフで刺した指を入れた。 「……くっ…………」 ああ、やっぱり。 指に当たっている鋭い牙。 シドはヴァンパイアだ。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加