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「そうか、シド。まだ病み上がりだから食事をした方がいい。腹は空いてるか?」
「食事は嫌いだ。」
そういってシドは顔を背ける。
嫌な予感はしていたんだ。
今日はとても。
真っ白な肌、貧血気味の顔。
シドの顔を見て少しづつ確信へと変わる。
知っていた。見たことがあった。
腹を空かせた奴らの顔を。
ルイは急に立ち上がり近くのナイフで指を刺す。血が出てきた瞬間シドの前へと差し出した。
「シド。お前。……ヴァンパイアだろ。」
「……っ…………。」
賭けだった。殺される覚悟でシドに詰め寄る。あの結界を破ったのだ。今更戦ってもルイに勝ち目は無い。
「………。……っ………やめろ……」
血を目の前に苦しむシドをみて、さらなる疑問が生まれる。
通常上位ヴァンパイアでも血を流すと魔力枯渇と貧血を起こし、血を大量摂取する。理性が効かなくなる時もあると研究論文で読んだことがある。
なのにこいつは血を嫌がっている。
ほんとうにヴァンパイアじゃないのか。
自分でもびっくりするくらい冷静だった。
「シド、こっち向いて」
「…………くるな、襲うぞ。」
そのワードに少し怖気づいたが無視して、シドの口に無理やりナイフで刺した指を入れた。
「……くっ…………」
ああ、やっぱり。
指に当たっている鋭い牙。
シドはヴァンパイアだ。
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