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「死んだな、俺」
殺る敵であるヴァンパイアを自ら助け招き入れるとは笑える話だ。
「ルイ、お前…………………」
口に指を突っ込まれた瞬間、なにを思ったのかシドは黙り込んだ。
指を噛みちぎろうともしない。
あそこまで血を流し、腹は減ってるはずなのに。
いままで見てきたヴァンパイアとは全くの別世界から来たものなのでは無いかと思うほどに欲がない。
「…………ふんっ……。不味い血だな。ヴァンパイアって分かってなんで自ら差し出した?殺されたいのか??」
鼻で笑いあからさまに不味そうな顔でこちらを見てくるシド。
「っ……ヴァンパイアなんて目の前に人間が居たら真っ先に食うだろ!」
「俺は人間が嫌いだからお前らを食ったりしない」
「そんなことあるわけ……っ……舐めんなっ!」
指を下で舐められ、我に返って指を引っこ抜く。
血が嫌いなヴァンパイアってなんだよ。
シドに関して謎が深まるばかりだ。
ルイは刺した指を処置しようとした瞬間ピタリと止まった。
「…うそだろ?」
指の傷口が何事も無かったかのように治っている。
「俺は500年以上生きてる。人間なんぞの子供の血液を食す趣味は無い。特にお前は不味い血だ。飲ませるな。」
そう言いながらベッドから出て無詠唱で先程ルイが苦戦していた鎖を外す。
もうこのヴァンパイアは一体何者なんだ。
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