錆びた天秤

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「誰でしたっけ、今日の面談の相手って」 「冴島晴美(さえじまはるみ)さんです」 「ああ……確か会社の上司にいじめられて仕事辞めた子でしたっけ。書類の動機の欄が頭っからケツまでびっしり書き込んでありましたね、あれはちょっとビビったなあ」  二人は面談室まで並んで歩く、必要書類などの荷物を持つのは井草の仕事になっていた。    許可が下りるまでの基本的な流れは、まず提出書類に必要事項を記入し管理局に提出する。  そして提出された書類を殺人管理士の資格を持つ人間が二名で精査し、そしてその中から正当性の高い案件を抽出する。    正当性の基準はかなり細かくあり一例として、  ・動機、第三者からみて十分に人を殺すに足りる動機かどうか。  ・加害者の周囲に与える影響、果たしてこの人間は生かしておいていいのかどうか、周りに与えるメリットとデメリットはどちらが多いのか。  ・加害者が被害者に対して行った行動に対し、法は十分な裁きを与えられているか。  などがあげられる。  そうして正当性の高い殺人と判断された後は、各所関係機関による裏付け調査が行われ被害者の言い分が事実であると認められると、次は面談が行われそこで改めて殺人に対する意思の確認と必要書類等への記入を行い、殺人許可を与える。 「てゆうか、そんなありきたりな案件なら井草さん一人で良かったじゃないですか。あの文章の勢いなら多分ガチだと思いますし」 「管理士は原則として二人で業務にあたらなければなりません、規則をお忘れですか」 「……分かりましたよ」
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