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「それで四十分も遅れたと……」
面接官は言った。
「はい! しかし、途中でタクシーに乗った方が早いと気が付いて乗ってきました」
この何とも言えない雰囲気を和まそうとヘイジなりのアイスブレイクを繰り出すも面接官の表情は変わらないままだ。
「遅れるなら連絡ぐらいできたはずですが」
「すみません。携帯を家に忘れてきまして」
「それなら、公衆電話とか、通行人に借りるとか連絡しようと思えばできたはずです」
「あっ」
「はぁ、一応面接はしますか、結果は変わりませんが」
「しかし、万が一ですよ。私が質問に対して完璧に答え、なおかつ可能性を感じられるほどの斬新なアイデアをお伝えすることが出来たとしたら……」
「知りたいですか」
「はい」
「ぜんぜん、一つもです」
面接官は言った。
「帰ります。ご迷惑をおかけしました」
ヘイジは、一礼して混沌の闇の中のような空間をあとにした。
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