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「おう、三村か?」
「……あぁ、そうだけど」
俺は知っている。自分で電話をかけておいて最初に相手の名前を確認する奴は、何かを企み、平静を装っていることが多い。
「まぁ、なんつーか、ちょっと相談したいことがあるんだわ。いつもの公園まで来れるか?」
予想通りの展開だ。それに公園なんて、尚更面倒くさい。早々に切ってやろうと頭を巡らせた。
「すまんな杉原。なんと俺は今、武器を抱えて大草原を走り回っている。ちょっと忙しいから、またにしてくれ」
「……話したくないってことだな?」
「杉原、大草原は危険で溢れている。ただそれだけだ。悪いが、切るぞ?」
「……そうか、残念だ。またな」
落ち込んだ声に若干の後ろめたさを感じたが、嘘ではない。俺は実際にモニターの中の草原を走っている。
オンラインゲームの真っ最中だ。
無人島に集いし百人の戦士達と、戦っている。
生き残りをかけた、バトルロワイヤルだ。
二人でコンビを組んで戦うモードが得意だ。ボイスチャットでコミュニケーションをとりながら、敵を倒していく。
俺の持ち味は、遠距離からの射撃だ。ともなれば、必然的に相性が良いタイプは決まってくる。
「……敵、来ないっすね」
「ええ。気長に待ちますか」
再び戦場に戻った俺は、岩陰で、さきほどマッチメイクした相棒と身を潜めていた。
気が合うな、と直感した。プレイスタイルが似ている。
しかしこれでは、勝利は掴めない。
刻一刻と過ぎる時間とともに、勝ち残ってきた猛者たちの気配が迫りくる。
案の定、数分後には、けたたましい銃声が四方八方から俺たちを襲い、負けを意味する赤い英字が表示された。
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