SHOOT‼︎

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「……見事なジャンプショットだな」  俺の言葉に、杉原は「チッチッチ」と舌を鳴らした。 「なんだよ、ヘッドフォンで聞くと耳障りだから、それやめろ」 「いやいや、ミムラーラよ。俺が撃つなら、だろ?」 「……うるせーな、今はゲーム中だろ。大体、おまえいつからゲームなんか──」  言い掛けたところで突然、降り始めた雨が屋根を叩くような音が響く。  タン、タタンという音とともに、杉原の体力ゲージが減っていく。  この音は、遠距離射撃──アサルトライフルだ。  杉原が取り乱したような声をあげる。 「ヤバい! こいつの仲間だ! ミムラーラ、逃げろ!」 「黙れ、静かにしろ」 「え? ミムラー……ラ?」  俺は大きく息を吸い込み、呼吸を止めた。  スナイパーライフルを構え、スコープを覗き、発射ボタンの上に置いた指先に、グッと力を込める。  タンッと一発、乾いた音がした。  同時に、弾道を表す光の筋が、まっすぐ走る。  ターゲットは、遠くの岩陰だ。  敵が慌てたように走り出す姿が見えた。  吸い込んだ息を、ゆっくりと吐きだすと、それを止めた瞬間、もう一度発射ボタンを押す──。  逃走していた敵が、力なく倒れ込む。  二発目の弾は、遠距離から敵の頭部を撃ち抜いた。この銃は、連射はできないが、その分ダメージが大きい。  俺のヘッドフォンからは、当たった瞬間、パスンッという音が聞こえた。  聞き馴染みのある音が、一瞬脳裏になにかを伝えようとしてきたが、俺はそれをなんとか振り切った。  それなのに、杉原の言葉がそんな俺を追いかけてくる。 「神業だな。遠距離は、ゲームの中でも十八番なんだな」 「たまたまだ」 「そんなこと言って。おまえは遠距離、俺は近距離が得意だ。いつだってそうやってきただろ?」 「うるせーな。なんでもかんでも結び付けるなよ」 「なんだ、わかってるじゃん」 「……しつけーな」  さっきのパスンッという音。  それは、スリーポイントシュートが、リングにかすりもせずにネットを揺らした時の音に似ていた。  馬鹿みたいな話だが、俺はあの瞬間の、あの音が大好きだった。  脳裏にしっかりと焼き付いている。 「まだ気にしてんのか?」 「……うるせーな」
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