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高校バスケの、インターハイ出場をかけた試合だった。
俺と杉原の二人は、二年生ながらにその試合に出場していた。
先輩たちは負ければ引退の大事な試合だったが、勝てない試合と判断した監督が、次の世代を見越した采配を行ったからだ。
しかし、俺はそれが許せなかった。
俺の座っていたベンチへ座ることになったのは、俺の最も尊敬する先輩だった。俺と同じポジションだった先輩のおかげで、俺のシュート精度は著しく向上した。
初めて部活動の見学に行ったときに、一目惚れしたシュート。
美しいアーチを描いたボールは、吸い込まれるようにリングへと向かい、パスンッとボールがネットを揺らす音だけが聞こえた。
それは今でも俺の憧れだ。
なぜ最後までやらせてあげないのか。
最後が教えていた後輩の応援なんて、あまりに不憫だと思った。
俺は杉原に耳打ちをした。
「おい、杉原。おまえも先輩たちを尊敬してるよな?」
「あぁ、もちろんだ」
「俺はたとえ負けても、最後までやらせてあげたい。監督を説得しよう」
しかし杉原は俺の言葉に、フッと笑みを浮かべた。
「なに逃げようとしてんだ」
「いや、そんなこと言ってねーだろ」
チッチッチッと、杉原お得意の音がした。このクサい仕草のあとには、昔から、決まってクサいセリフが来る。
「勝てばいい。それだけだろ? 行こうぜ、相棒」
そう言い残してコートの中へと走り出す杉原の背中を追いかけるように、俺も走り出した。
「なんだよ……クセーな!」
そう言いながらも、俺のスリーポイントシューターとしての闘志は、燃え上がっていた。
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