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俺は一心不乱にシュートを打ち続けた。外しても、杉原がゴール下で力強く跳んで、拾ってくれる。
打てない時は、ゴール下にパスをすれば、それをジャンプシュートでリングへと沈めてくれる。
敵のディフェンスは、次第に綻びを見せ始めていた。そんな俺たちに感化されたのか、先輩たちの動きもキレを増していった。
やがてスコアは、まさかの一点差を追いかける形。
そして残り時間、あと五秒──。
「三村!」
リバウンドを取った杉原が、力強いパスを出してきた。
俺がパスを受けたのは、スリーポイントのエリア。
「打て!」
誰かの叫び声を背にボールを放とうとした瞬間、俺の重心は大きくブレた。
ホイッスルが鳴る。
敵の強引なブロックで、ファウルをもらったのだ。
「よし!」と、誰かが歓喜の声をあげた。
与えられたのは、一本決まるごとに一点入る、フリースローだった。
文字通り、定位置から一人で、誰の邪魔もされずに打つシュートだ。
スリーポイントシュートだったので、それが三本。
杉原が俺の側へ来て、力強く背中を叩いた。
「頼んだぞ、相棒。おまえにかかってる」
「あぁ……わかってる……」
チームメイトの誰もが、疑っていなかっただろう。俺はフリースローラインよりも遠くからシュートを撃つのが得意な、スリーポイントシューターだ。
それに、一本は外しても良い。
二本外しても、まだ、なんとかなる。次を決めれば同点だ。
しかし、三本外したなら、それは──。
リングに弾かれた三本目のボールを、杉原がキャッチして、着地した瞬間ブザーが鳴った。
俺はスリーポイントラインよりもリングに近い、フリースローラインに立ち尽くしていた。
それから数週間、部活には行っていない。学校も休みがちになっていた。
時々、幼い頃から杉原と練習していた、バスケットゴールのある公園に足を運んでみたが、リングを見ると、ただひたすら嫌な記憶だけがよみがえり、結局はなにもせずに帰ってしまうだけだった。
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