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「ミムラーラ、なんでまたゲームなんだ? 俺もおまえもガキの頃からバスケ三昧で、ゲームはやって来なかっただろ?」
俺たちは岩陰に潜み、背中合わせで草原を見渡していた。
「それを聞きたいのは俺の方だ。なんでおまえがゲームなんてやってんだよ」
「さぁな」
「まぁ、どうせ俺と話して、またバスケさせようって魂胆だろうけどな」
「それはどうかな?」
「公園に呼ぼうとしたのも、どうせ昔みたいにバスケやろうとしたんだろ?」
「やっぱ、バレた?」
杉原はそう言い残し、前方にある岩陰へと駆け出した。
合図も何もなかった。
それでも、なにがしたいのか、俺にどうしてほしいのか、手に取るようにわかった俺は、スナイパーライフルを構えた。
杉原がもう少しで辿り着こうとする頃、タンッと一発、発射する。
相手は岩陰に隠れている。
当然、当たるどころか、かすりもしない。
「いいねぇ、相棒。わかってるじゃないの」
杉原の声が聞こえた直後、ショットガンの音がした。
俺のは、フェイントだ。
スリーポイントと見せかけて、ゴール下の杉原へ繋ぐ。あの日、コート上で敵のディフェンスをかき乱した、俺たちの得意技の応用みたいなものだ。
一人は葬った。
しかし敵は二人組。もう一人が、遠くの草むらから、杉原を目掛けてアサルトライフルを撃ち始める姿が見えた。
「おい、相棒!」
「わかってる、静かにしろ」
俺は敵の横顔に照準を合わせ、銃を構えた。
乾いた銃声と同時に、パスンッという心地よい音がした。
杉原の方を向いたまま、敵はパタリと倒れ込む。
銃声の鳴りやんだ静かなヘッドフォンから、杉原の誇らしげな声が耳を伝う。
「どうだ? 俺とのコンビは」
「調子に乗るな。ここからが猛者たちとの闘いだ」
「まぁ、行けるだろ。おまえが外さなければな」
「……うるせーな」
「頼んだぞ、相棒」
「しつけーな……」
無人島では俺たち以外も戦い合っている。なにも百人近くを倒す必要はない。
あっという間に敵の数は減っていく。そんな、テンポの速さもこのゲームの特徴だ。
気付けば残りも十組。
しかし残っているのは、激戦を生き抜いた猛者たちだ。
コントローラーを持つ手に、力がこもる。
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