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4「抑えられない男達」
ジュライが懐からソレを取り出すよりも早く、店主がジュライに掴みかかった。腕を抑えて叫ぶ。
「早くお逃げ!!!」
少年は一瞬躊躇するも直ぐに頭を下げて、店から出ていく。
「おい、待てよ!!!」
追おうとするジュライの腕を店主は離さない。
振りほどくのは簡単だった。が、ジュライは唇を噛んだ。
簡単過ぎることだ。振りほどくだけでいいのなら。
右目の疼(うず)きを感じてジュライは振りほどきかけたを戦慄(わなな)かせながら拳を握る。
「俺はあの子を保護しに来たんだよ」
「保護・・・?」
ポケットから飴玉が転がり落ちる。
「飴・・・?」
「うちの社長が、子供なら飴玉くれってやれって」
「本当に処分局の人間じゃないの」
「しつけーな。処分局なんてあったところでこんな辺境の街までこねえよ。だいたい政府だって、どこまで事情把握してんだか分かんないし」
離してくんない? と、睨むと店主は思いの外あっけなく、腕を離した。
「悪いね」
「いいよ、慣れてる」
落とした飴玉を拾い上げて埃を払って、ポケットに戻す。
「あんた外の人間だよね。この街じゃ見ない」
「仲間と何でも屋やりながら旅してんだよ。これ名刺」
飴玉を戻したポケットから四角いケースを取り出し、中から一枚カードを取り出した。
店主が受け取る。
カードには「なんでも屋エンシェントブラッド」と印刷されていた。
裏面にはジュライ、ディープ、ソウルの顔写真がプリントされており「ご用件はこの三人まで」と書かれている。
「何でも屋って何をするんだい」
「何でも。散歩の付き合いから、森を徘徊する化物退治、遠方の知人に連絡を取りたいってのまで」
「そんな事して何になるんだい」
「社長に聞いてくれ」
ため息半分に答えてジュライはイライラと頭を掻き毟った。
「保護を依頼したのは、あの子の父親かい」
「依頼人の事は話せねえよ」
「そうかい、じゃあとっと帰んな。私はね、あの親子の面倒見てんだ。よそ者にほいほい教えてやることはないよ」
「別にあんたに教えてくれって言ってねえだろ」
「そんな態度で商売が出来ると思ってる方がおかしいね」
「あんたに言われたくないな!!!」
と、一言怒鳴った後、ジュライは右手をテーブルに叩きつけた。テーブルが音を立てて真っ二つに割れる。
「帰っとくれ、二度と来るんじゃないよ」
「誰が来てやるか!!!」
そう言って店を飛び出し、数メートル歩いたところで顔面を覆った。
「またやっちまった・・・」
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