4「抑えられない男達」

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呟いて項垂れる姿には哀愁(あいしゅう)が漂っている。 テーブルを叩きつけた手を開いては閉じて、ため息をつく。 「暫く物触れねえな。ソウルと合流しねえと」 そう呟いて静かに目を閉じた。 瞼(まぶた)に映る光を一つずつ閉じていくイメージだ。皮を抜けて入ってくる光を消していく作業、完全な暗闇を心に描く。 周りの音も一つずつ遮断して、暗い闇の中に一人佇むイメージ。 精霊魔法の初歩だが、これが出来る人間は少ない。 生活魔法程度ならこんな事が出来なくても困らない。 ただ、応用して使いこなしたければ必ず通らなければいけない道で、冒険者でこれが出来ない精霊魔法使い手はいない。 先程まで見えていた街の人間達の姿が、暗闇の中では柱に置き換わる。 新緑の匂いを纏(まと)わせる蔦が絡んだ柱が多い。 (見張りもそうだったけど、この街の人間は木属性が多いな。あんまり精霊力も強くねえし) 暗闇の中に黒い光の帯と、水を滴らせたような水滴の跡が残っている。 辿っていくと大きな柱に当たる。 一つは地の底から湧いて出たような闇の柱。 もう一つは水流が幾重にも折り重なって出来た水の柱。 周りの柱とは比べ物にならない程しっかりとした存在感を放っている。 目を開けて、ジュライは脱力した。 軽い目眩を覚える。 二人は簡単にこれをやってのけるが、ジュライには数秒覗き見るだけで精一杯だ。 だが、これで二人の位置は分かった。 あれだけ入念に練られた精霊力は中々いない。 車のパーツを取り扱う店は各町に一店舗は必ず存在している。 危険な森を徒歩で移動は出来ないため、車は命綱だ。 燃料は精霊力で代替が効くと言っても、いざって時の為に精霊石の購入も必要になる。 「エンジンパーツと精霊石でしめて、349000ルビアだよ」 何度財布を確かめても300000ルビア足りなかった。 「どうしたんだい兄ちゃん、まさか金が足りないとか言わないだろうな」 値札は貼られていない為、価格は交渉するまで分からなかった。 けれども、ソウルは折り曲げた人差し指を唇に手を当てて思いを巡らせる。 「よそ者には買えない値段だったか、悪いね」 ニタニタと意地の悪い笑みを浮かべて、パーツ屋はソウルを見下ろした。 「そうだな、その肩に背負ってる鞄の中身でも下取りしてやろうか。精霊石の一つくらいなら代替えてやってもいいぞ」 得意げに大笑いをするパーツ屋を数秒眺めた後、ソウルは嘆息してゴーグルを外した。 ゴーグルを外したソウルの目を見たパーツ屋の顔が引き攣(つ)る。 「あ、あんたその目は・・・」 「忘れろ」 一言、そう呟いた。
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