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「はぁ……青行燈、さん」  彼の優しい口付けが、頬から鎖骨、そして私の手へと落とされる。その甘い感覚を追いかける度、意識がどろどろと混ざる。  彼がこぼれたものを拭ってくれたようだけど、その感覚も不確かだ。 「……ありがとう、お嬢ちゃん」  夢現に誘うような、彼の慈しむ声がした。 「は、い……」 「あぁ、眠たかったらそのまま寝てもいい。疲れただろう」  体に感じる違和感よりも強い眠気が、彼の体を伝って流れ込んでくるような感覚。  下腹を体温のない指が撫でていることに気付きながら、意識が溶けていくのを感じていた。布団の感触が心地よい。彼の匂いを感じる。  これで、ちゃんと青行燈さんのお嫁さんになれたのかしら。  ちゃんと出来たという安心感と、彼と繋がれた幸福感。そのふたつが、私の思考を否応なしに奪っていく。 「おやすみ、愛しい花嫁」  私の心を読んだかのように、低く優しい声音がした。  安心して瞼を閉じる。彼がそっと私の前髪を手に取ったのがわかった。  力が抜ける体と心。幸せな黒い泥にとけてゆく。  夢の中、あなたと私の間に抱かれる小さな子の顔を見た気がした。
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