デキる女の靴

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
「えー、落としちゃったの?」 シンデレラは、ガラスの靴を舞踏会の日に落として来てしまった。 「駄目じゃない。あれはあなたに合わせたデキる女の靴よ。他の人は履けないの」 「ごめんね。魔法使いさん」 舞踏会で会った王子は何を思ったのか、その靴に合う女性を探し、王妃にするというおふれを出した。 「まあね、靴を返してもらえる上に、王妃様になれるなら儲けもんでしょう。行ってらっしゃいよ。シンデレラ」 「うん、ありがとう」 シンデレラは、魔法使いに背中を押され、靴の試着者の中に参加する事にした。 国中の女性が靴を試着したが、合わなかった。シンデレラが履く番が来た。靴はピッタリ合った。 王子は釈然としない顔をしている。 「君、シンデレラ?」 「うん、そう。シンデレラ」 「靴、脱いでみて」 「いいよ」 シンデレラが靴を脱ぐとお腹の肉が三段になり、巨デブの女性になった。 王子が再び注文。 「履いてみて」 シンデレラが靴を履くと、突然モデル体型になった。 「魔法のアイテムだったのかー……」 王子はガックリ肩を落とした。 「王子様、この靴、私のだから、返して欲しいんです」 「ん……別にいいよ……」 王子はしょんぼりして、臣下と一緒に城に帰って行った。 シンデレラは自宅に帰る。魔法使いが待っていた。 「フラれちゃった」 「見た目で判断する男なんか、ほっておきなさい」 「悔しい」 「大丈夫、これはデキる女の靴よ。履いてる内に本当にデキる女になるから」 「本当?」 「本当よ」 「絶対よ。絶対デキる女になるんでしょうね」 「絶対なる」 魔法使いはそう言い、靴を置いて去って行った。 シンデレラはフラレた悔しさのあまり、ボクササイズを始め、数年後、本物のスレンダーになった。そして書いた物語がヒットしてしまい、ベストセラー作家になる。 彼女が街を歩いていると、太った若い女性が、同じ女性達に「デブ、デブ」いじめられていた。シンデレラは彼女を呼んで仲良くしたあと、ガラスの靴を差し出した。 「これね、デキる女の靴よ。あなたにあげる。持ち主にピッタリになる。履いてると本当にデキる女になるから。きっと幸せになれるよ」 (終わり)
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!