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真相
結局赤羽さんの家まで付いて来てしまった。
「安心して、変な事はしないよ。」
「当たり前です。少しでも怪しいと思ったらすぐに警察に通報しますから。」
「おお、怖っ」
赤羽さんがおどけてみせる。
「じゃあ、そこに座って待ってて。」
そう言って赤羽さんは部屋の真ん中に置いてある椅子を指さす。
「えっ、でも、こんな部屋に一人ではちょっと…」
流石に知り合ったばかりの人の部屋で一人っきりになるのは気が引ける。それに、その部屋は神社みたいな部屋だったからだ。
「大丈夫、まだ何も始まらないから。」
全然安心できない。“まだ”ってことはこれから何か起きると言うことなのか。私は更に不安な気持ちになった。でも、ここまで来たんだ、最後までやってやろうじゃないか。
それからしばらくして、赤羽さんはお札みたいなのを2枚持って戻ってきた。そして真面目な顔でこう言った。
「これからするのは、火凛ちゃんに憑いている霊と私達が繋がる儀式なんだ。儀式が始まったら、私だけを見てて。他のモノを見てはいけないし、目を閉じてもいけないよ?いいね?」
私は小さく頷いた。これからすることに少なからず緊張をし始めていた。いくら霊を信じてないとはいえ、こんな本格的な儀式をされるのは初めてだ。
「大丈夫、私を信じて。」
そう言って赤羽さんは何やら呪文らしき言葉をブツブツと言い始めた。すると、
ガタガタガタガタ
窓や周りの家具が揺れだした。いや、この家自体が揺れだしたのだ。
「あ、赤羽さんっ」
恐怖のあまり赤羽さんの名前を叫ぶ。
「しっ、大丈夫だから落ち着いて。」
静かな声でそう言われる。その声を聴くと不思議と落ち着きを取り戻した。
そのまま静かにしてること数分、言われた通りに赤羽さんのことを見ていると突然
キエェェエエ
と耳をつんざくような叫び声が聞こえた。
私は思わずその叫び声がした方を振り向いてしまう。
「振り向くなっ!!」
そんな赤羽さんの言葉が聞こえたが、もう体の動きは止まらない。勢いでそのまま振り向いてしまう。
そこには、そこには女らしきモノがいた。らしいと言ったのはそのモノが女と判断した要素が髪の長さとボロボロの白い着物を着ていたと言うことだけだからだ。
その女らしきモノと私の目が合う。そいつはニヤリと笑い
『ツカマエタアアアァァアア』
と言い手を伸ばしてくる。
「火凛ちゃん!!」
赤羽さんの叫ぶ声が聞こえる。あぁ、もうダメだ、そう思った時
バチバチバチ
私とそいつの間に電流が走る
『アアアアアアアアアアアアアアアア』
その電流を喰らってそいつが苦しそうな叫び声を上げる。そして、消えていった。
「な、何が起こったの?」
私が困惑していると
「ふぅ、上手くいったね。」
赤羽さんが溜息をつく。
「何をしたんですか?」
そう聞く私に、赤羽さんは2枚のお札を見せた。そのうちの1枚は黒く焼け焦げている。
「この焦げてない方が、私達とさっきの霊を繋げる為のお札。で、この焦げた方が霊を追い払う為のお札さ。」
成程。でも、そうなると
「じゃあ、赤羽さんは霊を追い払えることを知ってたんですか?」
「いや、霊と繋がるまでは追い払えるかは分からなかったよ。まあ、だいぶ古い霊だったから霊力とかも剝がれ落ちてたし、これはいけるかなって思ってね。」
一か八かってことだったのか。そんな儀式を私はやらされたのか。
「そんなに怒った顔しないでおくれよ。儀式は成功したし、ちゃんと奥の手も用意しておいたからさ。」
「奥の手?」
「それは内緒。企業秘密さ。」
赤羽さんは言葉を続ける。
「火凛ちゃんに憑いていた霊なんだが、どうやら火凛ちゃんのご先祖様から憑いてたようだね。ご先祖様に惚れてしまった女の恋が、時が経つにつれ、妬みに変わってしまったようだ。」
なんてこった、そんな迷惑な話はない。ないのだが、私は少しその女にも同情をしてしまった。最初は純粋に恋をしていただけなのだろう
「そもそも何で今となっては私の夢に現れたんですか?」
私の疑問に
「すまない、そこまでは分からなかった。ただ、火凛ちゃんとは何かと波長が合ったのは確かなようだね。心配なら詳しく調べようか?」
「是非お願いします。」
「じゃあ、私は火凛ちゃんのご先祖様について調べてみるよ。何か分かったら連絡するね。」
どうやって調べるんだろう、怖いから聞かないでおこう。
「あっ、会いたくなっても連絡するから♡」
うるさい//
そして、私は今一番気になっていることを赤羽さんに聞く。
「赤羽さん、あなたは一体何者なんですか?」
その問いに赤羽さんはフッと微笑み
「通りすがりの探偵だ」
「真面目に答えてください。」
「ごめんごめん、一度言ってみたくてね。では改めて。私の名前は赤羽 美鈴!!元巫女、現探偵の巫女探偵さっ。」
ビシッとポーズを決めて赤羽さんはそう言い切る。
「巫女…探偵?」
「そう、巫女探偵。幽霊も視えるし、祓えるし、頭も切れる。何でも出来るスーパー探偵なのさ。」
自分でスーパー探偵とか言うあたりダサいが、私はそのダサい探偵に助けられたのだ。
「助けてくれてありがとうございました。スーパー探偵さん。」
「いいってことよ。」
皮肉も通じないな、この人。
「じゃあ、家まで送っていくよ。もう暗いしさ。」
私はお言葉に甘えることにした。
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