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「みそれさん」
ユキヤさんより少し低い、アサくんの声が聞こえた気がした。
わたしを押し付けられた、優しくてかわいそうなアサくん。
誕生日おめでとう。
やっと、解放してあげられる。
マンションの鍵は、ポストに入れてあるからね。
「みそれさんっ!!」
残りのお酒を飲み干そうと上を向いた瞬間、幻聴だと思っていた声が、突然耳元で響いた。その直後に腕をはたかれ、ボトルが手を離れて闇に飛んでいく。
「何飲んだ?!」
「え……?」
「見せて!」
何が起きたのかもわからないまま、かじかんだ手から薬の包装シートがもぎ取られた。
突然の光に、思わず顔を背ける。薄目を開けると、細長い視界に、スマホのフラッシュライトで照らしたシートを凝視する彼の姿が映った。
険しい顔で、白い息を吐いているのは──
「アサくん?」
どうしてここに?
今日は遅くなると言っていたはずなのに。
「飲み会……は?」
そう聞いたわたしを睨みつけ、アサくんが腕を上げた。
殴られる! 反射的に硬くしたわたしの体は、強い力で引き寄せられた。
「みそれさん……っ」
アサくんの声が、頭の上から聞こえる。わたしは彼の腕に包まれ、抱きしめられていた。
「GPS、勝手につけたことは謝るけど」
「GPS……?」
「あの時、何か良くないことを思いついたなって、わかったから俺……」
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