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俺は、志見貴。今年成人式を迎えた普通の大学生だった。この間までは。
日本において1980年代中盤から後半に隆盛を誇り、1991年現在はそろそろシーンに翳りの見えて来たヘヴィメタルが好きで、仲間内で組んだメタルバンド・ディグジットでギターを弾いてる。
そんなしがない大学3年生ギタリストに、びっくりするような話が舞い込んだのはつい先日だった。
「志見、グリフィンにお前のテープ送るぞ」
軽音部の部室にふらりと現れたOBが、突然俺にそう告げたんだ。
「えっ? あのグリフィンですか?」
グリフィンって言えば、今の日本メタルシーンを代表するって言っても過言ではないヘヴィメタルバンドのうちの一つ。いわゆるパワーメタルってジャンルになるかな。王道メタルだ。
メタル誌には必ず載ってるし、何枚か出てるアルバムもいい作品揃い。俺も当たり前に聴いてる。
「他にグリフィンはねぇだろ」
「ですね。何でですか」
「ギタリスト探してんの」
ああ、何となくあの騒動は知ってる。デビュー前から在籍してた幸田平太が前のアルバムのリリース直前に脱退し、ツアーには不参加。急遽加入した元フラストレッドの安室永徳は、ツアー一本とシングル一枚であっさり飛んだ。日本のメタルファンなら誰でも知ってる話だ。
「何で先輩が?」
「鳥坂さんに声かけられたからな」
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