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「鳥坂さん?」  鳥坂さん、ってヴォーカルの人だよな。グラハム・ボネットばりの、腰の据わった声のヴォーカリスト。見た目はグラハム・ボネットみたいに厳つくはないんだけどね。 「一応知り合いなんだわ」  なるほど。メンバー総出で知り合いにギタリスト候補を挙げてもらいに周ってるのか。そんなに人材不足なのか、今のジャパメタ界は。 「業界狭いっすね」 「その狭い業界で、グリフィンに勧められるギタリストがお前くらいしかいねぇの」 「俺っすか」  つっても、メンバーは結構年上だよな。詳しくは知らないけど、イメージ的に。キャリアも段違いだし。俺と歳が近いわけがない。だって俺、高校生の頃からグリフィンは聴いてる。雑誌にソノシートとかも付いてたりするし。  飛んだって安室は相当なテクニック派だったから、ああいうレベルのギタリストを求めてるんだろう。普通なら、俺みたいなガキには声なんかかからないはずだ。でも付き合い上、先輩も誰か紹介せにゃならんのだろう。知り合いの危機に知らんぷりってわけにはいかないよなぁ。 「了解です」 「こないだのディグジットのライブのテープ渡しとくわ。あと、写真と経歴な」 「写真すかー」 「メジャーバンドだぞ。当たり前だ」  写真なぁ。ルックスには自信が……ない。ただの地味な奥二重の黒髪長髪だ。安室は派手な美形だったから、そこも対象外じゃん。完全に俺の出番じゃない。チラ見で終わる。  そんでも、これもお付き合いだ。先輩には逆らえない。  そこらに置いてある写真屋でくれる紙のアルバムを漁って、こないだのライブの写真を探し出す。証明写真じゃなくていいでしょ、別に。 「こっから適当にどうぞ」 「経歴も書け」 「へい」
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