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手近にあった誰かのレポート用紙を一枚破り、ボールペンを手に取る。何書きゃいいのかな。履歴書でもないし、学歴はいらないよな。職歴もちょっとしたバイトしかないし。
名前と住所と電話番号……は、いるよな？
長所・短所とか？ 長所は合理的。短所はものぐさ。これは表裏一体。でも、こんなもんいらないだろ。
履歴書だとすると、ここは趣味・特技を書くとこだ。
趣味も特技もギターじゃなきゃ話にならんから、ギターに関することを書けばいいはず。えーと、ギターを始めたのは高校生の時。歴5年、と。もう、グリフィンからしたらお話にならないペーペーだ。
経験バンドは……書くほどのもんないけど、一応バンド名だけ並べとくか。絶対に「知らん」って言われるけど。何も書かないのも素っ気ないし。
あとは、好きなギタリストとか？ じゃあ、ジョージ・リンチにマイケル・シェンカー、と。ジョン・サイクスとザック・ワイルドも書いとこう。
「こんなもんですか」
それを先輩に渡すと、さっと目を通す。さっと目を通す程度しか書いてないけど。
「ま、こんなもんでいいだろ。他のこと聞かれたら電話する。今日の夜、家にいるか？」
「いますよ」
「オッケー。今日、鳥坂さんと呑みに行くから渡しとく」
「よろしくでーす」
この時の俺は、グリフィンのメンバーに自分のプレイを聴いてもらえるのは貴重なチャンスだな、ラッキー、ってくらいにしか思ってなかったんだ。
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