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 斯波正人は、リーダーのベーシストだ。そこまでインタビューやら連載コラムやらを読み込んだことがないけど、それでも知ってる。めちゃくちゃ怖い人だろ。見るからに厳しそうな感じがビシバシ伝わってくる。 「何もねぇでしょうね」 「わからんぞ?」  わかりきってますって。あんな有名なバンドには、それに相応しいキャリアと実力のあるギタリストしか入れない。安室を入れたところから見ても、即戦力が欲しいに違いない。 「どうすかね」 「お前がグリフィンに入ったら、自慢すんだけどな、俺も」 「自慢してくださいよってか、何で自薦しなかったんですか」  先輩もギタリストだ。別に下手くそでもないし、自分で行きゃ良かったんじゃねぇの。 「俺は身の程を知ってる」 「うわー、どうぞって言った俺が身の程知らずみてぇじゃねぇですか」 「そうだろ」 「いやいや、俺、謙虚っすよ?」  先輩は、はははと笑う。 「そりゃ置いといて、俺は入れてもらえるならケルベロスに入りてぇな」 「あ、そうですね」  ケルベロスはもうちょいスラッシュ寄りだもんな。先輩の好みはそっちだ。自薦しないはずだ。 「そういうことだから、動きあったら」
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