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しかしいざ結婚しようとなったとき、彼女がこんなことを言い出したので、ピーターの中には動揺とはまた違う、不安からくる怒りのような感情がわいていたのも事実であった。
「まさか、結婚できない理由でもあるの?」
「そんなわけないじゃない…!今日のピーターなんだか変よ…?」
「っ!!なんだって?」
ピーターは疲れていた。IT系の企業に勤めている彼は会社からしたらまだまだ新人で、実力に見合わない仕事を永遠とさせられていることに彼は心底嫌気がさしていた。もともとあまり穏やかなほうではない彼は、仕事や、彼女の精神障害についてのストレスをよりにもよって付き合って3年記念日の今日、プロポーズ直後に爆発させてしまった。
結局この日は喧嘩に終わり、二人は記念日に似合わない暗い顔で帰路に就いた。
「…失敗したな…」
手の上で小さく光るダイヤモンドの指輪を見ながら、彼はそうつぶやいた。
マンション前の街灯に照らされたピーターの背中はいつもよりずっと小さくなっていた。
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