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彼女はきっと後悔しているだろう
雪で白く染まった街並みの空へ飛び立ってしまった事を
彼女の目の前に現れた黒服がその白くて細い指を絡めてそっちへいざなった
でも彼女の後から抱きついた白服は決してそっちへ行かせまいと必死にこっちへ戻そうとした
白い雪は彼女の髪に吸い寄せられる様に集まり儚い一瞬の花を咲かせながら消えて行った
彼女は何の決心もしないまま黒服に身を任せた
ただそれだけなのに...
彼女の深い悲しみも宇宙を彷徨う彗星のような孤独も全部引き受けてあまりある彼女の魂は1ミリの迷いもなくこっちにあったのに...
白く染まった地上を彼女の鮮血は勢いを増しながら漂い 雪も瞬く間に赤く染まった
でも 魂はとどまって彼女を呼び続けた
何が起こったのか彼女は分からなかった
見開いた目はぼんやりと白い世界を泳いでいる
そして黒服が白くて細い手を差し出すと彼女はその手を掴んだ
するとそれまで抱きついて放さなかった白服は雪のように儚く消え去った
彼女の魂は記憶の扉を開け全てを吐き出すと まるで真っ白な真珠のような魂に変わっていた
彼女の後悔は降り続く雪に埋もれて誰ひとりとして気づかない
降り積もる雪の中
彼女が演じた物語は深々と静寂の中で終演した
完
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