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苦い思い、俺よりも苦い思い、陽子が作ったエスプレッソ、俺は首を捻ってしばらく考えた後、陽子が目を逸らしているので確信した。
「陽子、もしかして、俺のこと?」
「鈍い。馬鹿!」
二人とも頬が赤く染まっていて、視線を合わせることができずにいた。
水上が手を差し出すと、陽子がその手をそっと握った。
「マスター、ありがとうございます。私の願い叶いました!」
「えっ、陽子も願い事していたの?」
「水上君よりも前に来ていたのよ、この喫茶店に。それで、言いにくいけど、水上君のことが気になって、それでマスターに相談したら……願い事を叶えてくれたわけ」
二人の会話を邪魔するのは無粋だと思って無言だったマスターが言葉を付け足した。
「立石君の純粋な恋心をなんとか成就できないかと思っていた所に、水上様が来店なされて、私としてはなんとか二人が結ばれないかと思っておりました。無事に結ばれた二人にプレゼントがあります」
テーブル席の中年のおじさんが白い歯を見せて、ニヤリと笑っていた。
「恋愛が成就して良かったね。おめでとう」
おじさんはそう言うと立ち上がり、手には二枚のチケットが握られていた。
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