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陽子は俺が無理をしているとすぐに勘づいた。
「本当にそれで良かったの?」
「良かったよ……」
陽子に聞かれて決壊したダムのように言葉が溢れた。
「あーあ、なんで恋愛って、うまくいかないんだろ。俺を好きになってくれる人なんているわけない!」
マスターが俺を宥めるように声をかけた。
「とりあえず、何かお飲みなりませんか?」
「そうですね、じゃあ、エスプレッソを」
マスターがその言葉を待っていましたとばかりに笑顔を向ける。
「本日のエスプレッソは特別なエスプレッソです。当店自慢の立石君が作るエスプレッソをご堪能ください!」
突然指名されたことに陽子が驚いて声が裏返っていた。
「えっ、えっ、私? エスプレッソはまだ作ったことないですよ」
「えっ、陽子が作るの?」
中年のおじさんまでもいつのまにか立ち上がってこちらに来ていた。
「お嬢さんが作るの?」
「みなさん、大丈夫ですから、落ち着いてください。立石君はエスプレッソは作ったことないけど、作り方は何度も見ているよね。それにわからなければ教えるから」
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