サンタクロースはきみを見ていた

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 ハル。それがボクの名前だ。この森で唯一のオオカミの子。生まれながらに小さい体つきのボクは、オオカミとしては出来損ないみたいだ。もういないけど、おじいちゃんが言ってた。  悲しかった。悲しかったけど、おばあちゃんもお母さんもとても大事にしてくれた。だから、悲しんじゃダメだって、そう思ってる。  家族だからなんでも話せる。  家族だから愛してもらえる。    そんなことはないんだと知ったのは、そのおじいちゃんの言葉を聞いてからだった。ボクは見ちゃったんだ。おじいちゃんの言葉に泣いていたおばあちゃんとお母さんを。  なんで立派に生まれてきてくれなかったの。  どんなに普通に過ごしていても、夜穴蔵で身を丸めて眠りにつくときに苦しくなるんだ。こう、胸の中がぎゅうううって締め付けられるような感じで。だから、きっと、今日もそうなんだろうな。  ボクはトトと別れたあと、真っ直ぐ家に帰る気になれなくて遠回りして穴蔵に帰ることにした。  てくてく歩いていると、大主さまの前まで来た。見上げるとどこまでも空高く伸びていくその枝が本当に立派で、ボクは感慨のため息をつく。
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