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女の子は笑いながらボクの前に立つと、その膝を折りボクに覆い被さってきた。あんまりにもいきなりのことで、ボクは動けなかった。
「ハルくん。ハルくんは、優しくて好奇心に溢れて、すごく素敵だね」
女の子は、ボクに寄りかかるようにしてボクの背を撫でてくれた。固くした身も尻尾も、ゆるゆると緩んでく。ボクは、ふわふわの雪が積もるような優しい声に聞き入ってしまった。だって、だってそれはずっとボクの欲しかったものだったから。
「オオカミらしいって、なんだろうね。別にオオカミらしくなくていいんだよ。そんなこと言ったら、あたしだって人間らしくないんだから」
女の子の言葉は、ボクの心に降り注がれた。どんどん。どんどんどんどんボクの心を溶かしていく。不思議だな。雪みたいな柔らかさなのに、雪みたいに冷たくないんだ。あったかくて、優しくて。なんて表現したらいいのかわからない。
「誰にどう思われようが、ハルくんはハルくんです。ハルくんが今こーして初対面のあたしに抱きしめられたまま、お話を聞いてくれる。そんな優しいハルくんが、どうして立派じゃないの?」
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