9人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょうど8週目に入ったとこだね。
妊娠、おめでとう」
「わぁ…っ」
超音波写真を手に取って見た佐川の笑顔に、津田も思わず顔がほころんだ。
産婦人科医になってまだ浅い津田ではあったが、それでも毎日お腹に命を抱えた患者を診ている仕事をしていると、この瞬間の患者の笑顔はいつ見ても自分でも嬉しくなってしまうものだった。
ただの人だった女性が、初めて見せる母親になった瞬間の笑顔なのだ。
津田が男であっても、やはり心があたたかく感じるものである。
…もちろん、この産婦人科に来る患者には、笑顔以外の顔をする者もあるわけだが。
「予定日は来年の春頃だよ」
「そっかぁ。すぐに市ノ瀬くんに教えてあげよ」
「あれ、そういえばイッセー来てるの?」
「うん。待合室にいるよ」
最初のコメントを投稿しよう!